「なるほど、最初のよりは本当っぽいな

「なるほど、最初のよりは本当っぽいな。しかし、そんな事しなくてもタゴロロームまで行くのに困りはしないだろう。」「そうね。では、ハナハナ党退治にハンベエの手を借りるため・・・というのは?」「ハナハナ党?」「この先のハナハナ山に巣くう山賊達の呼び名だよ。Moomoo ZMOT  人は下らないね。」「ふうん、で、何でまた、お前が山賊退治なんてものに手を出したわけだ?」「いや、まだ手は出しちゃいないよ。今思いついただけの事だからさ。」「今、思いついた・・・。」「まあ、そんなに邪険にしなさんな。タゴロロームまで一緒に行こうってだけで、別に危害は加えないからさ。あっ、そうそう、例の約束どうしようか?」イザベラは笑いながら、流し目をしてみせた。妖艶と言っていいほどに色っぽい。ハンベエはイザベラの視線に些かドキッとしたが、面には毛ほども出さず、「楽しみは後に取っておくタイプなんだ俺は。」と答えた。そうこうしているうちに、パーレルが水を汲み終えて戻って来た。「何やら、お話中の様子ですが・・・」パーレルはいつの間にか馬車から降りて向かい合っていたイザベラとハンベエを見て、怪訝そうに言った。ハンベエはパーレルの方に体の向きを変えると、「この先のハナハナ山に百人を超す山賊が巣くっていると聞いたが・・・。」と尋ねた。「ハナハナ山の山賊の話は聞いています。何でも大変残酷な連中だそうです。そういえば、首領の名前はドン・・・・」「ハナハナ党の事なら、オイラ知ってるよ。首領の名前はドン・バター、確かタゴロローム守備隊の方から、金貨50枚の懸賞金の懸けられた賞金首だよ。実を言うと、ハナハナ山の麓をどうやって通るか、頭を悩ませていたところなんだよお。」ロキが口を挟んできた。「なるほど、そういう悩み事は早めに打ち明けてくれよ、ロキ。」ハンベエは薄ら笑いを浮かべてロキに言った。「ハンベエに何かいい手があるの?」「いい手も何も簡単じゃないか。先手を取って退治してしまえばいいだけの事。」「簡単にいうけど、百人を超す山賊達だよお、しかも、山の砦に籠もってるんだよお。ハンベエが強いのは知ってるけど、そんなに簡単に退治できるのお?」「トロイの木馬って奴だな。敵の内懐に潜り込む必要はあるな。」ちょっぴり不安そうなロキにハンベエはいつものトボけた表情で言った。「内懐に潜り込むって言うけど、どんな方法があるのかなあ。」「そうだな。そいつは、追々考えるとして、先ずは飛び出せだ。一足先にハナハナ山に向かうから、ロキ達は一日待ってから進んで来てくれ。ハナハナ山に着く頃には、俺がハナハナ党とやらをすっかり退治しておくから。」「ハンベエのする事だから、信頼してるけど、飛び出せ、投げ出せ、好きにしろ・・・なんて事にならないよう気を付けてよ。」ロキは若干不安そうに言った。「それじゃ、先に行ってるぜ。」とハンベエは歩きだそうとした。待ってください。」イザベラのマリアが慌てたように、ハンベエの所によって来て、「私、きっとハンベエさんのお手伝いができますわ。」と言った。ハンベエとロキは顔を見合わせた。「マリアさん、相手は残酷な山賊達、女の身のあなたが行けば、危ないどころの事ではないですよ。止めた方が・・・」イザベラのマリアの正体を全く知らず、か弱い尼僧とばかり思い込んでいるパーレルは大いに驚いて止めにかかった。ロキはパーレルの慌てぶりが、はらわたが捩れるのではないかと思うくらい可笑しかったが、笑い出したいのをぐっと堪えた。「そうだな。マリアさんが手伝ってくれるというなら、一ついい手を思いついた。手伝ってもらえるかな?」ハンベエはイザベラに向かい、穏やかに言った。私にできる事であれば喜んで。」イザベラもあくまでも恭しい尼僧を装って答えた。心配そうに二人を見るパーレルの様子に、ロキが必死に笑いを堪えながら取り成す。何と言ってもハンベエが一緒に居れば大丈夫。じゃあ、ハナハナ党は任せたよお。」「ああ、任せておけ。ハナハナ山の麓で待っている。」ハナハナ党の首領ドン・バターは、今非常に不満を抱いていた。山賊の首領として、贅沢を極めていたが、困った事に女がいない。無論、村々を強掠する際には、若い娘も攫ってくるのだが、そうそういい女がいるわけはない。