「王女は何処に隠れたんだろうな。

「王女は何処に隠れたんだろうな。」「さあな、王宮中これだけ捜して見つからないんだから、とっくの昔に城の外に抜け出しているかもよ。」「それにしても、王女は何でまた国王陛下に毒を盛ったりしたのかな。」「知るかい、そんな事。」「しかし、あんな美しい、優しい姿の王女が国王陛下に毒を盛ったなんて信じられないぜ。」「全くなあ。女って分からないものだ。」三人は思い思いにくっちゃべっていた。エレナが中々捕まらないうちに、緊張感が弛んで来ていたようだ。「ん、何か聞こえないか。」一人の兵士が周りを見回した。「聞こえるって何がよ。」「それが、水の音のような。川のせせらぎのような。」「それより、何か匂わないか。」別の兵士が言った。最初に『何か聞こえないか。』と周大福教育集團 人才培養言った兵士の目が虚ろになった。「おい、どうしたんだ。」三人目の兵士がそれを見て、肩を掴んで揺すったが、デクのように立ち尽くしているだけである。ふと見ると二人目も虚ろな目をして呆然としている。一体何がと、言い掛けた三人目の兵士の耳に、何やら小さな音のような声のようなものが聞こえて来た。それは、心地良い音楽のようであり、天女の囁きのようでもあった。いつしか、その兵士は身体中の力が抜けて行くような異様な感覚に捉われた。何かふわふわと宙を漂っているような感じだ。この感じ何処かで・・・。その兵士が感じた何処かとは何処なのであろう。強いて云えば、母親の胎内というところであろうか。「心配ないよ。何も起こってないし、何も起こらない。」兵士の脳中に甘い天女の言葉が響いた。いつの間にか虚ろな目をして立ち尽くしている三人の兵士の前に二人の女人が現れた。イザベラとエレナであった。三人の兵士はイザベラの催眠術にかかってしまったのだった。「ふう、三人同時に術を掛けるなんて初めてやったよ。冷や汗もんだよ。」「大丈夫なんでしょうか?」「ああ、大丈夫さ。こいつもう立ってるだけのデク人形さ。氷のように凍てついた水でもぶっかけない限り、このままさ。さて、エレナ、さっさと着替えて抜け出すとしよう。」イザベラはそう言ってエレナの手を引いて王女の部屋に入って行った。一方、ハンベエにお断りをされた士官からの訴えを受けて、極めて不快の念を顔に浮かべたステルポイジャンが城門へと向っていた。言うまでもなく、城門で騒いでいるルノーを静まらせ、バスバス平原に帰還させるためである。そして、どういうわけか王妃モスカもそれに続いた。当然、ガストランタも王妃を守るように続いた。大将軍の部屋で大人しくしていればいいものを、この王妃、物見高い性格らしい。王宮の城門前にはバトリスク一門当主近衛師団長ルノーが手兵百名を従え、馬上にふんぞり返っていた。どうやら、このじいさん(と言うほどの歳でもないが)威張り散らすあまり、年を経て、世間の人とは逆の方向に背骨が曲がってしまったようだ。

わざわざ馬に乗り直して、高い所から王宮警備隊の兵士に嚇しを掛けていた。門を挟んで外側には近衛師団、内側には王宮警備隊、互いに肩肘張って睨み合っている。人数的には王宮内にいる王宮警備隊の兵士が圧倒しているが、何せ相手は近衛師団長、バスバス平原に戻れば一万人の兵士を擁する身であり、下っ端の兵士から見れば雲の上の人物である。しかも、大将軍ステルポイジャンには警戒体制を命ぜられたが、戦争を起こしてもいいとまでは言われていない。